人類は如何に神々として滅びるか

『自己が無視されることを無視するという彼等の英雄主義』

アフォリズム

 

【父親が多すぎる】

 普通息子は一人の父親をもつ。たいていは、その一人を殺せば満足するのである。けれども彼は業が深くて、もしくは自身を見積もりすぎているために、いくら殺しても殺してもあきたりないのだ。彼には父親が多すぎる。

 

【確かに非常識】

 彼女は個性的だと皆から思われていた。それだけに「あなたは案外普通ですね」と誰かから言われると物足りなく思った。彼女は年増になっても「人とは違った私」を演出しなければいけない少女、をいまだにつづけているという意味で、確かに非常識な女だった。

 

【才能がもつ特権】

 才能がもつ特権の一つは明らかに、自らを浪費することにある。自身の才能に対して冷淡でありえるということ自体が、凡才には不可能な特権である。

 

【野党的資質】

 自らの欠点を、他人のうちに見出す能力。

 

【歴史】

 老いぼれてしまった人類のカルテ。

 

【幸福】

 ある程度の不幸に対する賢明な承認、あるいは愚劣な承認。

 

【青年から落伍する】

 青年は人生や社会に意味を見出そうとする。一方、青年を過去とした者たちは、人生や社会から無意味を見出す。いや、青年も無意味を見出しはする。意味を見出そうとする試みに失敗して蹉跌を味わうのだ。しかし、見出した無意味を前にして、過誤や蹉跌の苦みを味わっていられるならばまだ青年のうちである。人はやがて見出された無意味に価値を見出す。そうして青年から落伍する。

 

【現今の文化的な諸課題】

 過去の天才達によって答が出されているのだが、それでは今現在のわれわれが食い扶持に困るので、いくつかの曖昧模糊とした用語を操ることにより、まだ解決されていないとすることに決定された問題たち。

 

【天才】

 天才がみずからの天才を証明するのは、答を導くときばかりではなく、本当の問題を指摘してみせる手つきの鮮やかさによってである。