人類は如何に神々として滅びるか

『自己が無視されることを無視するという彼等の英雄主義』

たまごかけご飯の理想的な食べ方

 

f:id:Ashiharayoshi:20160509151938j:plain

「B級グルメ」という言葉がいつの頃からか人口に膾炙した。おおよそ、ファース トフード、コンビニ商品、インスタント食品、ファミレス、屋台といったあたりの食べ物を含んで使われているらしい。

 比較的安価な現代日本の庶民の食べ物といった定義で大きな違いはないと思 われる。「スローフード」などという言葉が一時期流行ったのは、ファーストフードやインスタント食品を代表とするこの「B級グルメ」の「不健康」で「粗雑な味」というイメージに 対抗する形で発生したものだと予想されるが、結局なんだかんだ言っても、みんな「B級グルメ」を食べている。もしかしたら、雑誌のスローフード特集を読みながら、マクドナルドハンバーガーの悪質な肉を噛み締めていたなんて覚えがあなたにもあるかもしれない。とにかく「B級グルメ」は僕達にとって、もう無くてはならない存在なのだ。

 しかし、いつも金に困っている人生を送る僕には、「B級グルメ」でさえも往往にして高価な食べ物に思われることがある。食欲が常人よりも少ない僕にとっては、食費というものは、煙草と、種種の悪癖、悪趣味に使う金銭を確保するために、出来うる限り切り詰め 節約すべき出費なのである。
 従って、貧しい僕に最も親しい食べ物というものは「B級グルメ」よりもさらに一段下、便宜上それらに名称を与えてやれば、「C級グルメ」ということになる。
 麦茶茶漬け、具無しチャーハン、味噌汁ライス(味噌汁はもちろんインスタント) 、食パンの耳、などなど。しかしその中でも、最も僕が好み、そして食した、「C級グルメ」の王様、代表格といえば、この記事の題名にもなっている「たまごかけご飯」である。

 「たまごかけご飯」とはなんであるか? この記事を読んでいるかもしれない、 奇特なブルジョワジーへの説明をかねて、自称「世界初のたまごかけご飯鑑定士 」と今突然名乗りをあげることを決めた僕が、正しい「たまごかけご飯」というもの を、一切の反論を許さず定義しようと思う。
 まず小ぶりのどんぶりに、茶碗一杯分のご飯を入れる。そうしたら、ご飯の真ん中に箸で穴を開けてやる。チキンラーメンのたまごポケットと理屈は同じ。その穴にたまごを入れるわけだが、茶碗一杯分のご飯にLサイズのたまご一個を目安と考えてくれればよろしい。その時に気をつけてもらいたいのが、何故に小ぶりのどんぶりをわざわざ選んでいるかということだ。下手に茶碗を使ってたまごを入れると、開けた穴に入りきらなかった白身がどろんと茶碗から溢れて、情けないことになりかねないからである。どんぶりが用意できずに茶碗を用いる場合には 、十分注意をしてほしい。
 さて、生たまごを入れたら、その上から醤油を適量たらす。かけ過ぎるな。など ということは言わない。なぜなら、素材の米もたまごも、最下等の安物だからであ る。醤油をかけすぎて、素材の味を殺してしまうなどということはまずありえない。 好きなだけ醤油を使えばよろしい。
 いよいよご飯とたまごをからませる段取りになるわけだが、真ん中に開けた穴で生たまごと醤油を溶き合わせておこう。それから、穴に近い部分から徐々にご飯をからめるように混ぜていく。混ぜ方が足りないと、白い部分が残ってしまうし、 あまり混ぜすぎると、たまごが泡立ってしまう。
 また熱熱のご飯で「たまごかけご飯」をすると、少したまごが半熟状態で固まっ て、それがおいしいなどと馬鹿げたことをぬかしている輩がいたが、それは完全 に邪道である。なぜなら、「たまごかけご飯」とは、厳密に云えば、「食べる」もの ではなく、「飲む」ものだからである。

 あなたは学校給食などで、クラスの肥満児がカレーライスを旨そうに胃の中へと流しこんでいる姿を見た事が無いだろうか。彼は僕達がまだ一皿目を食べている途中で、悠々と二皿、三皿とおかわりを続けて、カレーを飲みこんでいくのある。 それと同じ状況が「たまごかけご飯」においてはどんなにやせた人間にも可能である。 「たまごかけご飯」とは決してゆっくり味わうものではなく、一気にかきこんで、胃 の中へ飲み下すものである。絶対にむしゃむしゃと噛み続けたりしてはいけない。 そのためにも、たまごは生の状態を保たなければならない。ところどころにたまごが半熟になって固まっているなどというのは最悪である。どうか「たまごかけご飯」 を作るときには、熱すぎるご飯は避け、幾分熱が逃げた状態で、作り始めて欲し い。

 「たまごかけご飯」を「C級グルメ」の代表として紹介したのは、単にその作り方 、飲み方に一家言持っていたからだけではない。「たまごかけご飯」には数多くの長所がある。まず一つ目が、その値段。安い。とにかく安い。二つ目はたまごの 栄養価の高さ。おそらく「C級グルメ」の中ではもっとも優れた健康食品と云える だろう。三つ目は手軽さ、簡単さ。疲れたときには、ご飯とたまごと醤油さえあれ ば一分かからず出来てしまう。そして最後に、ラッキョウ、福新漬け、たくわんなどなど、 どんな漬物にも、佃煮にも合うということ。

 どうです、みなさん。明日の朝かそれとも夜食にか「たまごかけご飯」が食べた くなったことでしょう。何? 気が乗らない? それでは仕方が無い。そんなあな たのために、僕がとっておきの「たまごかけご飯」の最高の付け合わせを教えましょう。
 それは「しそ昆布の佃煮」だまされたと思って食べて御覧なさい。病みつきになること請け合い。ようこそ、「C級グルメ」の世界へ。
 あそうそう、佃煮はスーパーの安物で。間違っても京都の専門店なんかで高級品を買ったりはしないように。

 

作者:葦原葭彦

Kindle小説著作リスト(http://www.amazon.co.jp/-/e/B00GLSC9DQ)

ブログの文章を気に入って頂けたなら覗いてみて下さい。