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人類は如何に神々として滅びるか

『自己が無視されることを無視するという彼等の英雄主義』

蛙鼠戦役(あそせんえき)……つまりカエルとネズミの戦争(叙事詩)

 幻獣を題材にした短編小説をシリーズで書きたいと思っていて、題材を探している。

 いや、題材はたくさんたくさんあるんだけれど、どうやって書くかということが問題だ。

 古代ギリシアに、カエルとネズミの戦いをえがいた喜劇風の叙事詩風の読み物があって、これはホメーロスが歌った『イーリアス』のパロディになっている。かつては、これ自体もホメーロスの作といわれていたらしい。ということは、現在では『イーリアス』と『蛙鼠合戦』(とか『蛙鼠戦争』とか『蛙鼠のたたかい』とか訳されている)の作者は別人だと考えられている。

 

 で、私はこのパロディのパロディを書こうと思いついた。カエルをカッパ(河童)に、ネズミをカワウソ(獺)にして、『河童獺戦争』という題名で一編書けそうな気がしたのである。

 ただ、ギリシア語なんて辞書があったとしたってとても読めはしないから、翻訳がないものかと探してみた。見つからない。『蛙鼠戦争』もしくはそれと似た題名の書物は、本邦では全然出版されていないらしい。

 それでも、しつこく探していると、昭和24年初版の『西洋古典論集』(創元社)という本の中に『蛙鼠戦役』という項目がある。「日本の古本屋」で見つけたわけだが、ともかく注文してみた。

 当たり。泉井久之助という人が訳してくれている。(七五調に訳していて……訳者が別のローマ喜劇のときも思ったが、いくら原文が韻文だといっても七五調は違うんじゃないかという気がするのだが)

 泉井さんはweb上の情報(つまりwiki)で確認する限り立派な学者さんらしい。とにかく感謝。

 

 まずふるっているのが登場人物の欄で、人物のあとに(?)と書いてある。

 前書きによると、この訳文は、『トマス・アレンの校訂出版にかかるオクスフォード版によって譯出』したそうで、そこに『登場人物(?)』欄もあったのだろう。多分。きっと。確かなことは分からんが。

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 写真はちょっとぼけてしまっているけれども、ギリシア語のカタカナ読みの下に「」でくくって日本語訳の名前が書いてある。

 順番に書き出すと

 

 蛙軍は「頬ふくれ」「水のぬし」「おほ聲や」「葦がくれ」「泥に寝」「韮みどり」「キャベツ踏み」「大咆えや」「にがくさ」

 

 対する鼠軍は「パン屑ぬすみ」「パン囓り」「石臼ねぶり」「ハム囓り」「皿ねぶり」「チーズえぐり」「壺しのび」「もの嘗めや」「穴こもり」「チーズくらひ」「ハムえぐり」「鳥目ひき」「もの囓りや」「ぶん取りや」

 

となっていて、名前だけでいうと、ネズミ軍のほうが楽しい。とはいえ、カエル軍の「泥に寝」なんていうのは訳の良さもあって趣がある(?)し、「葦がくれ」「キャベツ踏み」なんていうのもなかなかだ。

 

 内容はたわいないもので、あるとき、ネコに追われたネズミの王が沼のふちまで逃げてきて、カエルの王に会う。カエルの王に誘われて、ネズミの王は、カエルの住み処にいくことになる。ネズミはカエルの背に乗って、沼をわたっていくけれど、そこに水蛇が登場し、あわてたカエルはネズミをほっぽりだして逃げ、ネズミは溺死してしまう。その一部始終を別のネズミが見ていたために戦争になる。戦争は両軍の英雄が、次々に相手を倒し合うけれども、ネズミ軍が勝勢となる。しかし天から見ていたゼウスがカエルを憐れんで、カニの援軍を送り、ネズミはこれには敵わないと逃げ出して、戦争は一日で終わった……というあらすじ。

 

 さてはて、カッパとカワウソにして、うまく一編の小説にできるかはまだわかりません。まずは戦争の原因だけれども……。

 ただ、書き出しだけは考えてある。

『 笑い(の一部始終)を歌ってくれ詩の女神よ』

 うーん……どうなるものかな。

 

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