人類は如何に神々として滅びるか

『自己が無視されることを無視するという彼等の英雄主義』

鳥獣戯文

「饒舌な件(くだん)」(二) 【鳥獣戯文シリーズ】

「饒舌な件(くだん)」(一)へ 毀(こぼ)たれ、欠けて、かたむいた石段は、黒ずんだ苔におおわれていた。昨夜降り始めた霧雨は、午(ひる)をとうにまわってもはれない。四つ足の蹄が、湿った苔を踏んでのぼっていく。朽ちて倒れた鳥居をまたぎ越えると、雑草…

「饒舌な件(くだん)」(一) 鳥獣戯文シリーズ

風切り羽根が飛んだ。抜けおちた一本の翠緑色した羽根は、ゆるやかな螺旋をえがいて水面にひたろうとする寸前、きまぐれな春風によってすくいあげられ、ふらふらと翻弄されながら川下のほうへとはこばれていった。 人面の怪鳥(けちよう)はそれを最後まで追お…

「老麒」 鳥獣戯文シリーズ

麒麟は老いていた。微妙にうかせた体を岩の上に横たえながら、眼下に流れる渓流をものうそうに眺めている姿は、おいぼれた「くじか」と選ぶ所なく、五彩の鱗は色を失ってもはやそこから燐光を発するとは信じ難い。眼元の肉はたれ下がり、口ひげはだらしなく…