人類は如何に神々として滅びるか

『自己が無視されることを無視するという彼等の英雄主義』

読書

オレステイア三部作『慈(めぐ)みの女神たち』アイスキュロス──ギリシア悲劇を読む第五回

登場人物 デルポイなるアポロンの社の巫女 アポロン神 ヘルメス神 オレステース 故アガメムノーン王の息子、母クリュタイメーストラーを殺し、狂って諸国を流浪する。 クリュタイメーストラーの亡霊 復讐の女神エリーニュス(後に「慈(めぐ)みの女神」と変…

オレステイア三部作『供養する女たち』アイスキュロス──ギリシア悲劇を読む第四回

登場人物 オレステース アルゴス王亡アガメムノーンの息子。 ピュラデース オレステースの従兄で親友。 合唱隊(コロス) 王妃に仕える侍女たちから成る。 エーレクトラー アガメムノーンの娘でオレステースの姉。 従僕 王妃の召使。 クリュタイメーストラー…

オレステイア三部作『アガメムノーン』アイスキュロス──ギリシア悲劇を読む第三回

テキストは引き続き人文書院ギリシア悲劇全集 第1巻 アイスキュロス篇より。訳者は呉茂一。 登場人物と前置き 物見の男 コロス アルゴスの長老(おとな)たちより成る。 報せの使い クリュタイメーストラー アルゴスの王妃。 タルテュビオス 伝令使。 アガメ…

「オレステイア三部作」のための、まとまらないまとめ「呪われた一族」──ギリシア悲劇を読む予習編

オレステイア三部作を、乱暴でおおざっぱに簡約してしまうと、このようなまとめになりかねない。第一部では、悪妻による不倫と夫殺し、第二部では、息子による母殺しという復讐、第三部では、母殺しという罪の赦し。しかし、ギリシア悲劇はギリシア神話から…

『人間失格』だけじゃない!太宰治ならこれを読め──『晩年』とその他いくつか

はじめに(いつも通り読み飛ばし可) 一人の読者として、一人の作家の小説を読むとき、その作家が書いたどの小説をはじめに読んだかということで、作家に対するイメージの多くが決定されがちである。多分。中には、その一作だけで「さよなら」してしまう読書…

Youtubeでギリシア悲劇を観る──ギリシア悲劇を読む番外編

オレステイア三部作の「感想文」を書いてからにしようかと思っていたけど、前のほうがいいかと思い直して、Youtubeで観ることができるギリシア悲劇のご紹介。 現代劇として演出され直したものではなく、なるべく当時のものを再現(シミュラークル)しようと…

『ペルシアの人々』アイスキュロス──ギリシア悲劇を読む第二回

登場人物および前置き 訳者は久保正彰氏。 「ギリシア悲劇を読む」と題してブログ記事を書き殴るこのシリーズにおいて、われわれがテキストに選んだ、人文書院のギリシア悲劇全集 第1巻 アイスキュロス篇の二作目におさめされているのは、『ペルシアの人々』…

『縛られたプロメーテウス』アイスキュロス……ギリシア悲劇を読む第一回

を踏まえて、いよいよギリシア悲劇を読む。例によって、人文書院のギリシア悲劇全集 第1巻 アイスキュロス篇から、登場人物を書き写してみよう。 ・登場人物 権力(クラトス)と暴力(ビアー) 擬人化された神格、世界の主神たるゼウスの部下(但し後者は無…

ギリシア悲劇を読む、の序章にして、アイスキュロス篇の序章

「ぎりしあへ行きたしと思へど ぎりしあはあまりに遠し せめては古い巻をくりて きままなる読書の旅にいでてみん」 というわけで、本当にはギリシアにさほど行きたいとも思っていないけれども、悲劇と喜劇をもう一度読み直して、ブログ更新のかたがた記録を…

小説を書くなら必読!(?)な、文学理論・文芸批評の古典的名著たち

0.前置き(読み飛ばし可) よくそれなりに名前を知られた小説家や、業界に名前を売った批評家、評論家が小銭稼ぎに、「小説家のなり方」とか「書き方教則」本のようなものを出すが、はっきり言ってああいうのは、ほぼすべて買ってはいけない。 なぜなら、…

火野葦平『河童曼荼羅』を手に入れる──実は文人曼荼羅だった?──

河童が出てくる小説を書いていて、それは芥川龍之介の『河童』のパロディでもあるわけだけど、知識が「芥川の河童」ばかりというのも、あまりに怠けているようだから、他の『河童』も読んでみようという我ながら殊勝な心がけである。いや事実は「芥川の河童…

「移人称小説」なる造語を笑う

ために↓を手に入れていくらか前に読もうとしたが、ひどすぎて真面目に扱えるしろものではない。 小説技術論 作者: 渡部直己 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2015/06/23 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 人称の変化なるもの(例…

「我らにとってかくも理想的な未来」という悪夢──『すばらしい新世界』

ディストピア小説、それも超有名なディストピア小説である。 この小説のなにが一体おそろしいのか。たとえば同じディストピア小説の『1984年』とくらべてみて、どういう風におそろしいのか。『1984年』が描く管理社会もまたおそろしい世界である。しかし共産…

百科全書的もしくは世界を摸造する小説3冊「ガリヴァ旅行記」「高い城の男」「山椒魚戦争」

要は自分が偏愛する小説を紹介しようということです。 「百科全書的」という言葉があって、それは「文学」のジャンルというか分類というか(同じ意味か)とにかく、ある特徴をもった「作品」をまとめてそう呼ばれる。 特徴というのは、網羅的であるというこ…

村上春樹を一冊しか読んだことのない私が、村上春樹全体を論評するという暴挙に出る

はじめに 数年前に村上春樹を一冊読んだ。読んでいろいろ思うことがあったが、村上春樹は、きっとアイロニー的ロマンスの様式に属する作家だ、と思いついたのは、われながら悪くない考えだと思った。それで、これから村上春樹(ほぼ)全作品を読み、「今さら…

女は、恋人が自分にふさわしくないかもしれないと青ざめ、男は、自分が恋人にふさわしくないかもしれないと青ざめる

人は、ときに愚かで、ときに美しい。 もしくは、ときには愚かしいにもかかわらず、なおかつ同時に美しい。 こういう考え方に、説得力を与えてくれるような人間の営みの一つは、明らかに「恋愛」と一口によばれるものの諸相だろう。 記事のタイトルは、書籍か…

今も日本にカワウソは存在する!──カワウソ本の感想とか、カワウソサイトとか

訳あってカワウソ(特にニホンカワウソ)に関する情報を必要としている。 web上の情報(主にwikiとかになるだろう)ではあまりに心許ないと思い、こういう本を買った。 ニホンカワウソ―絶滅に学ぶ保全生物学 (National History Series) 作者: 安藤元一 出版…

生に寄せる祈り──ニーチェを袖にした美女がものした傑作詩

「生に寄せる祈り」 作:ルゥ・アンドレアス・ザローメ たしかにそれは友が友を愛するようなものだ 謎めける生よ、私がお前を愛するのは たとえ私がお前の中で歓喜に酔いしれたとしても、はた又涙にかきくれたとしても 又お前の私に与えたものが苦しみであっ…