人類は如何に神々として滅びるか

『自己が無視されることを無視するという彼等の英雄主義』

ドロテア

小説「ドロテア」(九) 森の中で

小説「ドロテア」(九) 森の中で 公国劇場の出し物の中に野外劇はいくつも数えられるが、緑の草を踏み、自然の中で役者が演じるのは、二日目の午後頭から、リッカルドが再び半円型劇場へ戻るまでの、原生樹林の森の中でだけだ。せっかく残ったこの貴重な森…

小説「ドロテア」(八) 神々は演ず

小説「ドロテア」(八) 神々は演ず ドロテア演劇二日目の「町」では、物語が停滞してしまう。主人公リッカルドという推進役を失ったせいで、劇の連続性に空(くう)隙(げき)が生じている。おそらくヒーロー不在の劇中で、代わりになる資格を持っているはずの…

小説「ドロテア」(七) 二日目

小説「ドロテア」(七) 二日目 ヒーロー(英雄)は死なない。どんな危難にあっても、ヒーロー(主人公)には、必ず救済の道が開かれる。作者と観客が望む限り、彼は不死身であり、永遠に冒険を続けられるのだ。 リッカルドが意識を取り戻したのは、見知らぬ…

小説「ドロテア」(六) ドン・アントーニオ

小説「ドロテア」(六) ドン・アントーニオ 読者はこの章を読み飛ばしても構わない。なぜなら、ここで語られる内容は、本書の付録的役割しか持たないだろうからである。冒頭、私はこの一冊の書物を、物語として提供すると約束した。そして語り手としてふさ…

小説「ドロテア」(五) 初日終わり

小説「ドロテア」(五) 初日終わり 「寝室はここね」 開かれたドアに肩をもたせ掛けるラウラの向こうには、ベッドが一つきりしかなかった。各部屋の天井にはランプが吊られてある。窓は厚いカーテンに覆われている。踏みならされて柔らかみを失った絨毯の上…

「ドロテア」(四) レストラン船

「ドロテア」(四) レストラン船 ドロテア港より一隻の大型遊覧船が出る。初日の開場から、おおよそ一時間ほど遅れた頃合いである。公国劇場の大門は、十時過ぎには大抵開いているから、だいたい午の一時間前には、このレストラン船が出港すると考えてよい…

小説「ドロテア」(三) 偽の葬儀

小説「ドロテア」(三) 偽の葬儀 英雄と代理の王、すなわちリッカルドとクレオンが姿を消すと、広い道に通じる大きな門がついに開かれる。多くの島民と、多くの観光客が、公国劇場の敷地内へ、呑みこまれるように入っていく。 ドン・アントーニオがこの道と…

小説「ドロテア」(二) 大使館

小説「ドロテア」(二) 大使館 役者や脚本家としてドロテア演劇に真面目な興味を持つ者ならば、本土の首都郊外にあるドロテア公国大使館を訪ねてみるがいい。小さな駅から住宅街の路地を二十分も歩けば、窮屈げに古いアパートメントと肩を並べている、くた…

小説「ドロテア」 (一) 開幕の歌

本書で取り上げるドロテア演劇における主な登場人物 クレオル 先王。三兄弟の長兄。故人。 クレオン 摂政。三兄弟の次兄。リッカルドを追い払った後、正式に即位する。 リッカルド 英雄。三兄弟の末弟。プリクート討伐に出陣後、苦難と冒険を経験する。 フラ…