人類は如何に神々として滅びるか

『自己が無視されることを無視するという彼等の英雄主義』

小説「ドロテア」(七) 二日目

小説「ドロテア」(七) 二日目 ヒーロー(英雄)は死なない。どんな危難にあっても、ヒーロー(主人公)には、必ず救済の道が開かれる。作者と観客が望む限り、彼は不死身であり、永遠に冒険を続けられるのだ。 リッカルドが意識を取り戻したのは、見知らぬ…

『狂えるオルランド』

狂えるオルランド 作者: ルドヴィコアリオスト,Ludovico Ariosto,脇功 出版社/メーカー: 名古屋大学出版会 発売日: 2001/08 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 11回 この商品を含むブログ (9件) を見る 欲しかった資料をうまいこと手に入れた。 安くはな…

小説「ドロテア」(六) ドン・アントーニオ

小説「ドロテア」(六) ドン・アントーニオ 読者はこの章を読み飛ばしても構わない。なぜなら、ここで語られる内容は、本書の付録的役割しか持たないだろうからである。冒頭、私はこの一冊の書物を、物語として提供すると約束した。そして語り手としてふさ…

小説「ドロテア」(五) 初日終わり

小説「ドロテア」(五) 初日終わり 「寝室はここね」 開かれたドアに肩をもたせ掛けるラウラの向こうには、ベッドが一つきりしかなかった。各部屋の天井にはランプが吊られてある。窓は厚いカーテンに覆われている。踏みならされて柔らかみを失った絨毯の上…

雨月こぼれ話

どうでもいいちゃどうでもいいがブログはメモだから。 新潮社の「新潮日本古典集成 雨月物語 癇癖談」の雨月物語のなかに、『青頭巾』という題名で、人肉をくう鬼(のように)なってしまった僧侶の話が収録されている。 本文自体が問題ではなくて、上段にあ…

「ドロテア」(四) レストラン船

「ドロテア」(四) レストラン船 ドロテア港より一隻の大型遊覧船が出る。初日の開場から、おおよそ一時間ほど遅れた頃合いである。公国劇場の大門は、十時過ぎには大抵開いているから、だいたい午の一時間前には、このレストラン船が出港すると考えてよい…

小説「ドロテア」(三) 偽の葬儀

小説「ドロテア」(三) 偽の葬儀 英雄と代理の王、すなわちリッカルドとクレオンが姿を消すと、広い道に通じる大きな門がついに開かれる。多くの島民と、多くの観光客が、公国劇場の敷地内へ、呑みこまれるように入っていく。 ドン・アントーニオがこの道と…

アフォリズム

【父親が多すぎる】 普通息子は一人の父親をもつ。たいていは、その一人を殺せば満足するのである。けれども彼は業が深くて、もしくは自身を見積もりすぎているために、いくら殺しても殺してもあきたりないのだ。彼には父親が多すぎる。 【確かに非常識】 彼…

小説「ドロテア」(二) 大使館

小説「ドロテア」(二) 大使館 役者や脚本家としてドロテア演劇に真面目な興味を持つ者ならば、本土の首都郊外にあるドロテア公国大使館を訪ねてみるがいい。小さな駅から住宅街の路地を二十分も歩けば、窮屈げに古いアパートメントと肩を並べている、くた…

小説「ドロテア」 (一) 開幕の歌

本書で取り上げるドロテア演劇における主な登場人物 クレオル 先王。三兄弟の長兄。故人。 クレオン 摂政。三兄弟の次兄。リッカルドを追い払った後、正式に即位する。 リッカルド 英雄。三兄弟の末弟。プリクート討伐に出陣後、苦難と冒険を経験する。 フラ…

「饒舌な件(くだん)」(二) 【鳥獣戯文シリーズ】

「饒舌な件(くだん)」(一)へ 毀(こぼ)たれ、欠けて、かたむいた石段は、黒ずんだ苔におおわれていた。昨夜降り始めた霧雨は、午(ひる)をとうにまわってもはれない。四つ足の蹄が、湿った苔を踏んでのぼっていく。朽ちて倒れた鳥居をまたぎ越えると、雑草…

「饒舌な件(くだん)」(一) 鳥獣戯文シリーズ

風切り羽根が飛んだ。抜けおちた一本の翠緑色した羽根は、ゆるやかな螺旋をえがいて水面にひたろうとする寸前、きまぐれな春風によってすくいあげられ、ふらふらと翻弄されながら川下のほうへとはこばれていった。 人面の怪鳥(けちよう)はそれを最後まで追お…

「老麒」 鳥獣戯文シリーズ

麒麟は老いていた。微妙にうかせた体を岩の上に横たえながら、眼下に流れる渓流をものうそうに眺めている姿は、おいぼれた「くじか」と選ぶ所なく、五彩の鱗は色を失ってもはやそこから燐光を発するとは信じ難い。眼元の肉はたれ下がり、口ひげはだらしなく…

フェイクニュースと小市民的正義ーー国民の愚かさは安倍晋三の責任ではないーー

こんなことをブログに書いても意味ないが、備忘録というかメモとして残しておこうと思う。 いわゆる「森友・加計問題」なるものが問題であるとするならば、それは安倍自民の問題ではなく、メディアと国民の問題である。 おしなべて左派であるメディア(=フ…

安倍政権支持率急落の二つの隠れた理由ーわれわれ大衆は自らを良しとし、そして飽きたー

1.われわれ大衆は「自民党にお灸をすえた」過去を間違っていたと思っていない なるほど、あのときメディアにのせられて、民主党に本気で期待したのは愚かだった。投票したのは後悔している。しかし、だからといって、自民党が良かったと思い直したわけでは…

サヨクと野党は国民の大多数から「オオカミ少年」だと思われていることに気づけてない

別に「国連報告者」の件が不発に終わったっていいんです。また他の安倍になんくせつけられるネタ用意してくりゃいいんだから。そう、なんくせなんです。いちゃもんレベルです。加計にうつれば森友とかどうでもいいわけで、特定秘密保護法案が通れば言論の自…

絶対安全神話とミサイル避難方法

政府のHPに「ミサイル避難方法」が載ったそうです。 正確には、内閣官房のホームページにある「国民保護ポータルサイト」に掲載された。内閣官房 国民保護ポータルサイトここにPDFで置いてある。「政府のHP」で検索かけてからたどりつくまでに数分を要…

「FAKE VS FAKEの時代」もしくは「大真実時代」

昨日ひさしぶりにブログを更新して とか書いたけど、訂正します。 「真実」という日本語は、十人いれば十種類ありうるんだから、客観的事実というものを重んじるために、「ポスト真実」ではなく「ポスト事実」にしろとか言ったところで無意味なので、無意味…

「ポスト真実」っていう訳語自体が「post-factual」だと思うので今からでも「ポスト(客観的)事実」に統一して下さい

「ポスト真実」って言葉がメディアやネット世間をふわふわ浮遊しているようです。 これは訳語だそうで、だから海外発信の言葉、概念ってことになる。 ポスト真実の政治 - Wikipedia (post-factual politics) おおよそのところは大先生でご確認下さい。 し…

オレステイア三部作『慈(めぐ)みの女神たち』アイスキュロス──ギリシア悲劇を読む第五回

登場人物 デルポイなるアポロンの社の巫女 アポロン神 ヘルメス神 オレステース 故アガメムノーン王の息子、母クリュタイメーストラーを殺し、狂って諸国を流浪する。 クリュタイメーストラーの亡霊 復讐の女神エリーニュス(後に「慈(めぐ)みの女神」と変…

オレステイア三部作『供養する女たち』アイスキュロス──ギリシア悲劇を読む第四回

// Amazon.co.jp ウィジェット 登場人物 オレステース アルゴス王亡アガメムノーンの息子。 ピュラデース オレステースの従兄で親友。 合唱隊(コロス) 王妃に仕える侍女たちから成る。 エーレクトラー アガメムノーンの娘でオレステースの姉。 従僕 王妃の…

世界は3はてブでできている

繰り言を書くのは、あまり生産的ではないけれど、まあブログってものはそういうものも受け入れうる雑記帳でもあるだろうから、特別今思いついたというわけではないにしろ、とにかく今自分が思っていることを備忘録として書きつけておこうと思う。 はてなブロ…

私は私の偏見を抱きしめていたい

偏見を攻撃する言葉が往々にして偏見に満ちているのは、たとえどのような彼、彼女であっても、考えられうる限り完璧な人間でも、それが神であっても、完全に偏見からのがれることなど不可能だからである。 可能であるとすれば何も考えないことである。頭に浮…

太宰治『津軽』の嘘

太宰の小説をまとめ記事にして目論見はずれてあんまりアクセスが稼げなかったおりに(『人間失格』だけじゃない!太宰治ならこれを読め──『晩年』とその他いくつか )『津軽」についてもエピソードを紹介しようと思っていたけど、文量が多すぎたので、断念し…

オレステイア三部作『アガメムノーン』アイスキュロス──ギリシア悲劇を読む第三回

テキストは引き続き人文書院ギリシア悲劇全集 第1巻 アイスキュロス篇より。訳者は呉茂一。 登場人物と前置き 物見の男 コロス アルゴスの長老(おとな)たちより成る。 報せの使い クリュタイメーストラー アルゴスの王妃。 タルテュビオス 伝令使。 アガメ…

「オレステイア三部作」のための、まとまらないまとめ「呪われた一族」──ギリシア悲劇を読む予習編

オレステイア三部作を、乱暴でおおざっぱに簡約してしまうと、このようなまとめになりかねない。第一部では、悪妻による不倫と夫殺し、第二部では、息子による母殺しという復讐、第三部では、母殺しという罪の赦し。しかし、ギリシア悲劇はギリシア神話から…

『人間失格』だけじゃない!太宰治ならこれを読め──『晩年』とその他いくつか

はじめに(いつも通り読み飛ばし可) 一人の読者として、一人の作家の小説を読むとき、その作家が書いたどの小説をはじめに読んだかということで、作家に対するイメージの多くが決定されがちである。多分。中には、その一作だけで「さよなら」してしまう読書…

Youtubeでギリシア悲劇を観る──ギリシア悲劇を読む番外編

オレステイア三部作の「感想文」を書いてからにしようかと思っていたけど、前のほうがいいかと思い直して、Youtubeで観ることができるギリシア悲劇のご紹介。 現代劇として演出され直したものではなく、なるべく当時のものを再現(シミュラークル)しようと…

『ペルシアの人々』アイスキュロス──ギリシア悲劇を読む第二回

登場人物および前置き 訳者は久保正彰氏。 「ギリシア悲劇を読む」と題してブログ記事を書き殴るこのシリーズにおいて、われわれがテキストに選んだ、人文書院のギリシア悲劇全集 第1巻 アイスキュロス篇の二作目におさめされているのは、『ペルシアの人々』…

「『人生は理屈だ』と言ってやれ」と彼は言ったのだ

ぼくは理屈っぽい。世の中には、ぼくより理屈っぽい人間もある程度いるのかもしれない、いることだろう。そうであっても、ぼくは結構、理屈っぽい部類に入ると思う。相当。かなり。かなり相当。ぼくは理屈っぽい。 しかし、理屈っぽい人間は嫌われる。 たと…